恐らく、当時私と行動を共にした人は「あいつだ!」と心の中で叫ぶかもしれませんが、その叫びはどうぞご自身の心にそっとしまっておいてください。
私のフーゾクとの出会いはハナタレもいいとこの 10歳の頃でした。
小学校高学年の社会研究の時間のことです。
普通なら、地元の歴史を調べたり、工場や会社などを見学させてもらったりするのが子供らしい社会研究の行動じゃあないですか。
「これからはフーゾクでしょ、フーゾク。」
と同じ班のハナタレ男が、風俗産業で決定とばかりに私たちに吹聴してまわりました。
エロいマセガキで有名な彼のことです。
鼻の下をビローーーンと伸ばしながら、きったない字でノートに質問事項をまとめはじめました。
「おまえらさ~、フーゾクってなにか知ってる?」
ポカーンとアホ面をかます私たちを前に、彼が続けます。
「きれーなお姉さんが出てきてさ~」
それでピーンときましたね。
「エッチな本みたいなことをするんでしょ?」
なぜか眠たいはずの授業中、私たちの班が異様な盛り上がりを見せはじめました。
もう全員ノリノリ状態です。
電車に乗って取材しに行こうということになりました。
そして電車に揺られて行ったのが新宿、歌舞伎町ですよ。
今考えてみれば、ハナタレのガキとはいえ、昼間でも小学生のグル―プがフラフラするような場所ではありません。
昼間はギラギラした雰囲気ではないのですが、スーツを着た夜の商売人たちがフラフラしていましたね。
取材写真として、電気の通ってないネオンサインやお姉ちゃんたちの看板をインスタントカメラで撮りまくったわけですよ。
「やっぱり話も聞かないとね」
などと言いながらも、コワイお兄さんたちに話かける勇気はありません。
地元でも子供が行方不明になった話を聞かされていたせいもあるでしょう。
ひとしきり写真を撮ったあと、エロいリーダー持参の地図に書かれたマルを頼りに区役所まで行きましたよ。
フーゾクについて教えてくださいと言ったところ、担当のオッサンに爆笑されましたが、風俗産業の問題点をいろいろ説明してくれて、社会的にはなくしていくべき産業だが、それを必要としている人もいるんだよねーとミョーに意味深な言葉で終わりました。
エロい情報をたくさん仕入れるはずが、結果的に大真面目な社会研究テーマとなりました。
週が明けて模造紙にマジックで情報を書き込みながら、なんか一仕事やりとげたような達成感をメンバー全員が味わいましたね。
ネットがなかった時代でしたので、規制がユルかっただけかもしれませんが、よく担任がこのテーマを許したなと今でも思うわけですよ。